大腸の疾病と腸内微生物の変化

 大阪大学医学部、国立がん研究センターなどの研究者は、大腸がん検査を受けた616人の腸内細菌を調べ、がん発症の際に特定の細菌種類の増加することを発見しました。この結果は、科学雑誌ネイチャー・メディシン(25巻968-976頁、2019年)に掲載されましたが、増えた種は、主にFusobacterium nucleatum, Atopobium parvulum, Actinomyces odontolyticusの3種類で、いずれも嫌気性菌(酸素を嫌う細菌)です。これらの嫌気性菌は、全てが悪玉菌ではありませんが、多くは腐敗菌とも言われます。

一方、大腸には、多くの、(酸素を好む)好気性の自然常在菌(土壌菌の種類)、いわゆる発酵菌の生息することが知られています。

腸内は、酸素がないと思われていますが、これは間違いで、酸素は血液によって供給され、胎児がこの酸素を吸収して成長するように、微生物も血液中の酸素を使用します。このために、多くの好気性菌が増殖・分布し、そして、これらの菌が腸内の病原菌やウイルスを抑制、排除します。

また、口腔から体内に入る自然細菌は、胃の酸によって死滅すると思われていますが、実際には、これらの菌は、弱ることはあっても、胃を通過し腸に到達し、腸内常在菌として増殖します。胃酸は、微生物を殺すほど強くはなく、もし強酸であれば胃の細胞は損傷してしまいます。

一方、腸内で部分的に存在する嫌気環境は、血流の停滞、消化不良、心身の不調などが原因して拡大することがあり、そこでは嫌気性菌が増殖します。

腸内の酸素を増やすためには、適度な深呼吸や無理のない有酸素運動などによって、血液中の酸素濃度の上昇をはかることが効果的とされます。また、上記の3菌のなかの2種は、歯周病の原因菌としても知られる菌種のため、直接的な関連はないかもしれませんが、口内の健康維持も求められると思います。

腸内細菌減少のリスク

ペニシリンなどの抗菌薬を2歳までに服用した乳幼児は、ぜんそく、鼻炎、アトピー性皮膚炎などの免疫異常によっておこるアレルギー疾患の発症リスクが、服用経験のない乳幼児と比べ1.4~1.7倍になるとの調査結果が発表されました。

インフルエンザ・ウイルスを分解する微生物の発見

インフルエンザの原因となるウイルスには、いくつかの種類がありますが、この微生物(細菌)は、ウイルスの構造自体を分解するため、その感染力を不活化することが判明しています。

長寿者の腸内には常在菌が多い

これまでに、人間の免疫の司令塔は脳内にあるとされていましたが、実際には、免疫細胞の60%以上は腸内でつくられていることが明らかになりました。このため、腸は第2の脳と呼ばれています。そして、この免疫生産には、共生する腸内細菌が不可欠な要素で、実験的に腸内細菌を除くと免疫能は大幅に減退します。この腸内において、免疫細胞を一番多く生産する部位パイエル板に分布する細菌を調べると、その70%は自然界に多い常在菌であることが明らかにされ、加えて、長寿者の腸内には、これらの菌がより多いことも報告されました。 そして、今までは、腸内細菌の主体は乳酸菌、ビフィズス菌とされていましたが、これらは全体の10%以下であることも判明しています。

発酵食品の有益微生物

常在菌(土壌菌の一種)は、人間の腸内にも多く生息しています。この菌は発酵食品にふくまれ、漬物、納豆や味噌中にも生息します。これまで、主体はバチルス菌や酵母とされてきましたが、これらの食品において、常在菌が半数を占めることもまれではありません。

そして、空気中にも浮遊しているので、煮物料理などを一晩置くとこの菌が多くなります。これらを緩やかに温め食すことで菌を摂取することができ、また、海藻や農薬を使用していない生野菜などの表面にも付着しています。味噌汁は、沸騰する前に火を止めると美味しいという伝承は、微生物の保存という配慮があったのでしょう。

これらの食物で、悪い匂いがしなければ、ほぼ善玉の常在菌がいると考えることができます。発酵と腐敗とは微生物の行う同じような反応といわれ、事実、人間によいものをつくる場合は発酵、害になる場合は腐敗と言われます。

土壌菌が主体である常在菌が経口的に摂取され、腸が善玉菌と認識すれば受け入れます。このような腸の判別能力については、多くの研究で報告されました。

健康を増進する善玉菌研究のプロフェッショナル 「バイオプロジェクト(株)」